〈場所:埼玉県行田市 散歩日:2021年7月24日、2022年7月2日〉
行田市は、埼玉県の北部に位置し(熊谷市の東側)、北側は利根川を境に群馬県と接する。
昨年「利根大堰」を見に行き、今年はたまたま、それに続く「武蔵水路」を見る機会があったので、併せてとりあげる。
これらの施設により、東京都や埼玉県などの首都圏に必要な都市用水や隅田川の浄化用水を導水している。なくてはならない重要な施設だ。
利根大堰(とねおおぜき)
利根大堰は、利根川の中流域で埼玉県行田市と群馬県邑楽郡千代田町の間にある。
取水した水は、見沼代用水路、武蔵水路、埼玉用水路、邑楽用水路及び行田水路に分流し導水している。
◎東京都・埼玉県・群馬県の約1,300万人の水道用水を供給している
◎埼玉県・群馬県の水田約23,300ヘクタールに農業用水を供給している
◎隅田川に河川浄化用水を供給している
※参照:水資源機構のWebサイト https://www.water.go.jp/kanto/tone/index.html
利根大堰と武蔵大橋
利根大堰上部は、埼玉県行田市と群馬県邑楽郡千代田町を結ぶ、道路橋「武蔵大橋」として活用されている。堰の全長約690m、1968(昭和43)年10月竣工。
左から2番目の堰柱の基部から下流側に伸びているのは魚道。
堰の門扉(ゲート)は12基、行田市側から順に土砂吐ゲート(2)、調整ゲート(4)、洪水吐ゲート(6)があるようだ。この時、ゲートが下がっていたのは3ヶ所で、たぶん調整ゲート。
堰柱(門柱)の上部には橋よりも高い位置に四角い建物がある。ここはゲートを開閉させる装置室。武蔵大橋をくぐり大堰を見る。
堰の上流側
堰柱(門柱)の両サイドにはゲート用の凹みがある。この角度で見るとダム感がある。
利根大堰のすぐ上流にある行田市側の取水口。ここから沈砂池を通り、見沼代用水路や武蔵水路、埼玉用水路に分水される。
大堰の上流は広い湖のよう。流域面積日本1位(長さ2位)の利根川だけのことはある。ここは、群馬・埼玉の県境に拡がる数少ない広大な水面なので、水上バイク、ウェークボード、カヌー、手漕ぎボート等が混在し、マリンスポーツが盛んに行われているという。
堰の下流側
下流側に戻り、水辺に降りてみた。十字ブロックが対岸まで敷かれている。これは「護床工」というもので、水の勢いを弱め、川底が削られるのを防いでいる。
利根大堰を下流から正面に見る。橋上の自動車でサイズ感も分かる・・・かな。
利根大堰には魚道が3か所あり、そのうちの1ヶ所には魚道観察室=大堰自然の観察室が設置され、サケやアユ、マス、コイなどが遡上している様子を間近で眺めることができる。
しかし、残念ながら見たかった『大堰自然の観察室』は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため休止していた。フェンス越しに魚道の一部が見えたので記録しておく。
武蔵水路(むさしすいろ)
武蔵水路は埼玉県行田市の利根大堰で利根川から取水された水を運び、鴻巣市で荒川に注ぐ全長14.5kmの水路で、1967(昭和42)年に完成。
荒川と合流された水は、荒川を約30km下った地点にある秋ヶ瀬取水堰で取水され、東京都と埼玉県に送られ生活用水に用いられている。また、隅田川の浄化用水を導水している。
武蔵水路が供用を開始した昭和42年の隅田川のBOD(生物化学的酸素要求量)は約40mg/lだったが、浄化用水の導水と隅田川流域の下水道整備が相俟って、現在では基準値の5mg/l程度まで水質が改善されている。(利根導水総合事業所のWebサイトより)
調べてみると、BODの値が大きいほど汚い川ということで、BODが10を超えるような汚い川では、イトミミズやあかむしといった汚いところに住む生物しか生きられない、死の川になってしまうという。昔の隅田川の40mg/lって相当な・・・。
改築工事で2連水路に
「さきたま古墳公園」を散歩した後、公園内の博物館の裏側から水路に向かった。
武蔵水路は中央を壁で仕切られ、左右に分かれた2水路になっている。完成したときは1水路であったが、改築工事にともない2水路になったという。橋からの下流の様子。
反対側、上流の様子。この後、上流の方で水路が曲がる辺りまで行く。
〔現地説明板より〕完成から40年以上たち、老朽化等が進んだことから、安定通水機能の回復、施設の耐震化、内水排除機能の確保・強化と、通水を行いながらの点検や補修を可能とすることを目的に、2010(平成22)年8月~2016(平成28)年3月まで、水路の全面改築が行われた。
※参考 Web:けんせつPlaza > 首都圏への水を流しながら改築する武蔵水路
http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/10594
長期間の工事になったのは、首都圏の都市用水に使用しているので、改築工事期間中であっても水を止めることはできず、水を流しながら工事を行わなければならなかった。さらに、水路本体を施工する時期は都市用水の需要が少なくなる12月~翌年5月までの6カ月間とし、通水量を制限しながらの工事だったという。
水路中央に隔壁(厚さ25センチ)を有する2連の鉄筋コンクリートフルーム水路に改築されたことにより、今後は、通水を確保(片側通水)しながら水路内点検や補修が可能となり、施設の長寿命化が図られることとなった。
佐間水門(さますいもん)
武蔵水路の橋を渡り交差点を上流側へ進むと、忍川(おしかわ)と武蔵水路を結ぶ「佐間水門」があった。
佐間水門から武蔵水路に放流される所は、隔壁が一部外され、左右均等に流れるようになっていた(隔壁で調整ができそう)。ここからUターンして引き返す。
「佐間水門」の役割は、大雨の時に流量が増した忍川の水の一部を武蔵水路内に取り込み内水排除をするため。その際は利根大堰からの取水は停止されるようだ。
調べてみると、非常に強い雨となった今月12日~13日にかけて、今年度初めての内水排除を実施した。忍川の佐間水門地点で約1.15mの河川水位の低減をしたものと推定される。
※参考 Web:水資源機構 利根導水総合事業所 武蔵水路 内水排除を実施(pdf)
https://www.water.go.jp/kanto/tone/pdf/news/2022/220713.pdf
利根導水路
利根導水路事業は、東京周辺の首都圏の水需要の急激な増加に応えるため、利根川水系の総合的な水資源開発計画の一環として行われている事業。その根幹ともいえるのが利根大堰で、ここから武蔵水路などの水路を通って東京、埼玉、群馬へと運ばれている。
※参考 Web:水資源機構 利根導水総合事業所 利根導水路の概要
https://www.water.go.jp/kanto/tone/about/about/index.html
利根大堰も武蔵水路も大変有用な施設だ。日本の土木は(昔から)エライものだと思う。
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